和歌山 · 紀伊半島
みなべの梅
皮が薄く柔らかい「南高梅」の母樹が1902年に一人の農家によって見出された、斜面の町。その梅を育てる農業の仕組みは、国連から世界農業遺産に認定されています。
国連が梅の栽培システムを認めた理由
「みなべ・田辺の梅システム」が評価されたのは、梅そのものだけでなく、斜面全体の使い方です。この地域は養分に乏しい礫質の急斜面が多く、稲作ができる平地も少ないため、江戸時代初期に田辺藩が梅の栽培を奨励しました。農家は梅畑の上の尾根に薪炭林を残し、その森が雨水を蓄えて土砂崩れを防ぎます。薪炭林のウバメガシは最高級の白炭「紀州備長炭」の原料になります。ニホンミツバチが梅の花の受粉を担い、梅畑の下草は斜面の土壌流出を防ぎ、刈り取って肥料にもなります。約400年にわたって続いてきたこの循環が、世界農業遺産の認定対象です。
多くの旅行者がこの景観に触れるのが「南部梅林(みなべばいりん)」です。「一目百万、香り十里」とうたわれ、梅の木は約8万本とされ、日本最大級の梅林と紹介されています。公園ではなく実際に梅干し用の梅を育てる農家の畑で、観梅の時期だけ一般に開放されます。散策コースや展望台があり、梅干しや名物のいももちを売る露店も並びます。
和歌山の梅は全国の市場で圧倒的なシェアを持ち、農林水産省によれば2022年の収穫量は全国9万6,600トンのうち約6万4,400トンでした。2025年8月には、県北部の有田・下津地域の石積み階段園みかんシステムも同じ国連の制度で認定され、和歌山県には世界農業遺産の果樹栽培システムが2つになりました。
みなべの1年
花見と梅もぎは数か月離れています。どちらを見たいか決めてから旅程を組んでください。
| 時期 | 梅の様子 | 旅行者ができること |
|---|---|---|
| 1月下旬〜3月上旬 | 梅の花。見頃は例年2月中旬ごろ | 南部梅林の散策(この時期のみ開園)、週末のイベントや露店 |
| 5月下旬〜6月 | 青梅、続いて完熟南高梅の収穫 | 個別農園での予約制の収穫体験 |
| 7〜8月 | 農家で梅を塩漬けし、天日干しして梅干しに | 新物の梅干しを買う(見学できるものは少ない) |
| 通年 | 加工・販売 | 道の駅「みなべうめ振興館」(梅の歴史や特産品の無料展示) |
訪問の前に
南部梅林の開園期間は開花状況によって毎年変わります。2026年は1月31日〜3月1日、8時〜17時で、入園料は大人500円、小中学生200円でした。前年の日程をそのまま当てにせず、みなべ観光協会のその年の告知を確認してください。
梅林は斜面にあります。道は梅畑の中を上っていくので、歩きやすい靴で行ってください。散策コースは2つあり、上には展望台があります。ペット連れも可能です。
6月の収穫体験は、単一の中央施設ではなく、ぷらむ工房、紀州本庄うめよし、JAわかやまなど個別の施設が実施しており、各施設への事前予約が必要です。例えばぷらむ工房の青梅狩り体験は1人1,000円、所要約1時間で、青梅1kgと梅ジュース1杯付き。希望日の4〜5日前までの予約が必要で、2026年は満員でした。長袖・長ズボン・作業靴・手袋・帽子を着用してください。
みなべ町の道の駅「みなべうめ振興館」では、梅の歴史や品種の展示を無料で見られ、地元の梅干しも買えます。開館は9時〜17時、火曜休館(2月は無休)です。
古いガイドには、みなべ町のもう一つの梅林「岩代大梅林」が載っていることがあります。梅の木が改植の時期を迎えたため2018年から休園しており、現在は南部梅林が観梅の場所です。
みなべは白浜から電車ですぐなので、観梅の時期なら白浜への行き帰りや、紀伊田辺経由で熊野古道へ向かう途中に立ち寄れます。
南部梅林:観梅情報
以下は2026年シーズンの情報です。毎年ほぼ同じ体制で、日程は開花に合わせて決まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開園期間 | 観梅シーズンのみ。2026年は1月31日〜3月1日 |
| 開園時間 | 8:00〜17:00 |
| 入園料 | 大人(高校生以上)500円、小中学生200円 |
| 駐車場 | 普通車1日500円 |
| 公共交通 | JR南部駅から臨時バスで約10〜15分(開園期間のみ運行) |
| 車 | 阪和自動車道・みなべICから約6分 |
| 見頃 | 例年2月中旬ごろ |
みなべへのアクセス
JR特急くろしおで新大阪または天王寺から白浜方面へ向かい、南部(みなべ)駅で下車。大阪から約2時間です。くろしおは一部の列車しか南部駅に停車しないため時刻表を確認し、停まらない列車の場合は御坊か紀伊田辺で普通列車に乗り換えてください。観梅シーズンの土休日には、JRがくろしおを南部駅に臨時停車させることがあります。
南部駅からは、梅林の開園期間中のみ龍神バスの臨時バスが運行し、約10〜15分です。タクシーも利用できます。
収穫体験の農園はみなべ町と隣の田辺市の丘陵に点在し、多くは線路から離れているため、車かタクシーがあると格段に便利です。