和歌山 · 紀伊半島
笑い祭
年に一度、道化の化粧と衣装をまとった男が「笑え、笑え」と唱えながら川沿いの小さな町を練り歩きます。伝説によれば、それが寝坊した女神を元気づけるために必要だったことです。
笑いそのものを奉納する祭り
多くの日本の祭りは収穫や祓い、神様の渡御にちなむものですが、笑い祭は笑いそのものが中心の儀式になっている珍しい祭りです。丹生神社の女神・丹生都比売命は、10月に出雲で開かれる神々の集まりに寝過ごして遅れ、すっかり落ち込んでしまいました。村人たちは一緒に笑うことで女神を元気づけたといいます。笑うことで邪気を払い、豊作を招くという願いが今も込められています。
主役は「鈴振り」です。白塗りの顔に赤い頬、そこに「笑」の字を描き、赤い頭巾とカラフルな衣装をまとって鈴を振り、見物客にお菓子を配りながら、笑っていない人に向かって「笑え、笑え」と叫びます。その後ろには、串刺しのみかんなどを盛った一升枡を捧げ持つ12人(閏年は13人)が続き、神社へ供え物を運びます。
笑い祭は、実は4つの村の祭りが一つになったものです。丹生神社は1909年に和佐・江川・山野・松瀬の神社を合祀してできた神社で、各地区が今もそれぞれの芸能を奉納します。和佐の笑い祭と踊り獅子、江川の奴踊り、山野の雀踊り、松瀬の竹馬駆です。宮入りの際には、各地区の鬼による「鬼の挨拶」「鬼の出会い」といった古い儀式も行われます。
なお、日高川町の丹生神社は、高野山のふもと・かつらぎ町にある世界遺産の丹生都比売神社とは別の神社です。笑い祭が行われるのは、御坊の南、日高川流域の小さな村の神社です。
当日のスケジュール
祭りはおおむね9時から17時ごろまで続きます。時刻は目安で年によって多少前後します。多くの見物客のお目当ては11時ごろの行列です。
| 時刻 | 内容 | 場所 |
|---|---|---|
| 9時ごろ | 「鬼の出会い」:各地区の鬼が出会う儀式 | 御旅所(神輿が一時とどまる場所)付近 |
| 10時40分ごろ | 獅子舞 | 行列の道筋 |
| 11時ごろ | 鈴振りが登場し、「笑え、笑え」と叫びながら神社まで行列を先導 | 御旅所から丹生神社まで |
| 12時50分ごろ〜17時 | 神社での奉納:四つ太鼓、幟上げ、各地区の踊り、獅子舞 | 丹生神社境内 |
訪問の前に
11時ごろに鈴振りの行列が出発する前に場所を確保できるよう、10時30分ごろまでに着くのがおすすめです。時間が限られるなら、午前の行列と神社での最初の奉納が祭りの核心です。
観光客向けの受付体制(チケット売り場、英語表示、観覧席など)はない、純粋な地域の祭りです。外部の観光客向けに整備されていないことこそが魅力の一部なので、現金と飲み物を持ち、洗練されたイベントではなく地方の実情を踏まえた心構えで臨んでください。
ぜひ一緒に笑ってください。鈴振りは笑っていない見物客を狙って声をかけてきますし、参加して笑うことこそがこの日の目的です。行列の撮影は普通に行われていますが、狭い道では担ぎ手や演者に道を譲ってください。
一駅北の道成寺駅から歩いてすぐの道成寺と組み合わせるのもおすすめです。安珍・清姫伝説の舞台で、国宝の千手観音像をはじめ二十数体の仏像を安置し、伝説を絵巻で語る「絵とき説法」を1日に何度も行っています。拝観は9時〜17時(年中無休)、大人700円です。
4地区の奉納芸能
丹生神社のもとになった各地区が、それぞれの伝統芸能を午後に神社で奉納します。
| 地区 | 芸能 | 見どころ |
|---|---|---|
| 和佐 | 笑い祭の行列と踊り獅子 | 化粧をした鈴振り、串刺しのみかんを盛った一升枡、「笑え」の掛け声 |
| 江川 | 奴踊り | 大名行列の供回りを模した踊り |
| 山野 | 雀踊り | 笠をかぶった踊り手による踊り。雀踊は隣の御坊にも伝わる |
| 松瀬 | 竹馬駆 | 竹で作った馬にまたがって駆ける芸能 |
笑い祭へのアクセス
大阪からはJR特急くろしおで新大阪または天王寺から御坊まで約1時間半〜2時間、そこで普通列車に乗り換えて2駅で和佐駅です。この区間の普通列車は本数が少ないので、乗り継ぎを事前に確認してください。
和佐駅から丹生神社(日高川町江川1956)まではタクシーで5〜10分です。会場に駐車場はありません。
御坊は白浜・みなべと同じくろしおの沿線にあり、南へ1時間かからないため、白浜に泊まって日帰りで行くこともできます。