和歌山 · 紀伊半島
那智の扇祭り
年に一度、白装束の男たちが燃えさかる12本の大松明を担ぎ、那智の滝の石段を上り下りする。日本の代表的な火祭りの一つで、神々が生まれ故郷の滝へ里帰りする日です。
年に一度、神々が里帰りする日
那智の滝はそれ自体が神として祀られています。熊野那智大社によると、那智の信仰は滝のもとで始まり、仁徳天皇5年(317年)に社殿が現在の山の中腹へ移されました。扇祭りはその故事を逆にたどる神事で、山上の御本社に祀られた神々を12体の扇神輿に遷し、滝の前の飛瀧神社へお渡りいただきます。神社はこの祭りを、那智の信仰の根本である「水」と「火」の尊さを表すものと説明しています。大松明の炎の勇壮さから「那智の火祭り」とも呼ばれます。
扇神輿は、多くの祭りで見る箱形の神輿とは形がまったく違います。高さ約6m・幅約1mの細長い枠に白銅鏡や檜扇を飾ったもので、その姿は滝を表すとされています。大松明は1番から12番まであり、第一大松が約50kgと最も重く、第十二大松は約25kg。いずれも高さ約1.3m、直径約44cmです。
火の神事は一日のうちの一部にすぎません。午前中は大和舞や、室町時代から伝わりユネスコ無形文化遺産にも登録されている「那智の田楽」、御田植式が奉納されます。午後は松明の神事の後に御田刈式と、滝に向かって舞う那瀑舞が続きます。写真に撮られるのは火ですが、この祭りは水と豊作への祈りでもあります。
舞台は、普段の日に誰もが歩く場所そのもの——神社と青岸渡寺の三重塔の下、大通りから那智の滝へ下る石段の参道です。だからこそ劇的な光景になりますが、見物できる場所は限られます。
7月14日の式次第
熊野那智大社が公表している式次第です。火の神事だけが目当てなら、13時半よりかなり前に滝の参道で場所を確保してください。大松明が神輿を迎えるのは14時頃です。
| 時刻 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 10:00 | 御本社 | 御本社大前の儀(神饌を供えて祈念) |
| 11:00 | 特設舞台 | 大和舞(地元の児童による奉納舞) |
| 11:30 | 特設舞台 | 那智田楽(ユネスコ無形文化遺産) |
| 12:15 | 御本社 | 御田植式(古い木製の農具を持ち、田植歌に合わせて巡る) |
| 13:00 | 御本社 | 扇神輿渡御祭(12体の扇神輿が滝へ出発) |
| 13:30 | 伏拝 | 伏拝扇立神事(第一扇から第十二扇まで順に立て起こす) |
| 14:00 | 滝の参道 | 御火行事:12本の大松明が扇神輿を迎え清める |
| 14:17〜14:50 | 飛瀧神社・那智御瀧 | 扇褒神事、御瀧本大前の儀、御田刈式・那瀑舞 |
| 15:30 | 御本社 | 扇神輿還御祭 |
訪問の前に
車で行くのが一番大変です。神社によると、那智山の有料駐車場は例年10時半ごろに満車になり、それ以降は大門坂駐車場など山の中腹の臨時駐車場に停めて、熊野御坊南海バスの無料シャトルバスで上がることになります。臨時駐車場にも限りがあるため、神社はできるだけ公共交通機関の利用を呼びかけています。
祭りは曜日に関係なく毎年7月14日です(2027年は水曜日)。前の数日には準備の神事も行われます。
この日は那智で一年で最も混雑する日です。日帰りではなく勝浦に泊まるなら、早めの予約が必須です。那智勝浦観光機構は年によって有料の特別拝観席付きプランを販売しているので、春ごろに公式サイトを確認する価値があります。
7月の和歌山は高温多湿で、御火行事まで何時間も石段の上で待つことになりがちです。日陰をあてにせず、水分・帽子・日焼け対策を持参してください。松明からは火の粉と熱が出るので、立ち位置は係員の指示に従ってください。
滞在全体の計画には、宿や普段の滝の様子をまとめた那智・勝浦ガイドや、朝の過ごし方として勝浦のマグロ市場も参考にしてください。7月14日は2026年は火曜日、2027年は水曜日で、火曜日はほとんどの週でマグロの競りがありません。
祭りへのアクセス
JR特急くろしおで新大阪または天王寺から紀伊勝浦駅まで約3時間半〜4時間。駅からは熊野御坊南海バスの路線バスが通常ダイヤで「那智山」バス停まで運行しています(約30分)。神社によると、祭りの当日の乗り降りは「那智山」バス停のみです。バスは混雑を覚悟してください。
紀伊勝浦駅からタクシーなら約20分で、滝に近い「那智の滝前」バス停付近で降りられます。
海岸エリア観光で勝浦に宿泊しているなら、特別な移動ではなく宿からの短い外出です。それでも駐車場が満車になると山道が渋滞するので、早めに出発してください。